2007年3月18日日曜日

M&Aとは何か?

M&Aとは何か?
 「M&A」と英語の略称で言われても、何のことかよくわからない方も多いかもしれません。あるいは新聞等で見かけてなんとなく知っていても、詳しいイメージが湧かない人もきっと多いと思います。そこで、M&Aとは何か、M&Aにはどのような形態があり、具体的にどのようなことを指すのかをわかりやすくご説明します。
「M&A」の意味
 「M&A」は、 Mergers(合併) and Acquisitions(買収)の略です。日本語に訳しますと、「企業の合併・買収」という意味になりますが、通常は企業全体の合併・売却だけでなく、一部営業譲渡や資本提携なども含めた広い意味での「企業提携」のことを総称しています。 M&Aには色々な形態があり、それを図式化すると以下のようになります。本市場では広義のM&Aを対象としていますが、原則として資本移動を伴わないM&Aはお取り扱いしていません。
M&Aの形態
 前述したように、M&Aには様々な形態があります。ここでは、その中でもよく用いられる「合併」「株式譲渡」「営業譲渡」「新株引受」の4方法について、概要をご説明します。
合 併
 「合併」は、複数の会社が合体して1つの会社になることで、たとえば同じ業種の企業間で規模の大きいA社が規模の小さいB社を吸収して1つの会社となるようなケースです。この場合、A社が存続会社となり、B社の方は消滅(解散)します。これを「吸収合併」と言い、ほとんどの合併はこの形式で行われています。 吸収合併では、吸収されるB社の資産、負債、技術やノウハウ、人材等のすべてをA社が包括的に引き継ぎ、その代わり(消滅する)B社の株主には存続会社であるA社の株式が交付されます。その際、様々な角度からAB両社の1株あたりの価値を評価し、イコールと思われる比率で株式を交付するのですが、その比率が「合併比率」と言われるものです。なお、吸収される方の会社が債務超過である場合は、合併を行うことはできません(その逆は可能)。 合併は、規模の拡大を図る際に用いられやすい方法ですが(銀行の合併など)、手続きが煩雑なことや、合併後の社内体制の整備や企業文化の統合などに手間がかかることもあり、中小企業同士の合併はあまり多くありません。また、存続会社が未公開企業の場合、消滅会社の株主は受け取った株式の現金化が難しいこともその一因かと思われます。
株式譲渡
 「株式譲渡」は、売り手企業が既存の発行済株式を譲渡することによって、会社の経営権を買い手に譲り渡すものです。合併と異なり、会社の株主が代わる (所有者が代わる)だけですから、当然、売り手の会社は存続します。株式譲渡は、手続きが比較的簡単なことから、中小企業においてもよく用いられる、M&Aの中で最も一般的な方法です。 株式譲渡によってM&Aを行う場合、買い手は売り手企業をそっくりそのまま「買う」ことになりますので、商圏や許認可権等を含めた有形無形の資産を非常にスムーズに引き継げるというメリットがあります。ただし、簿外債務等があった場合は、それまでそのまま引き継いでしまうリスクも発生しかねませんので、最終契約の前に十分な事前チェックを行うことが必要です。 一方、売り手企業側(特に社長)からすれば、これまで心血を注いできた自分の会社が存続する上、株式譲渡では株主個人に直接お金が入ってくるので、創業者利益を実現しやすい方法と言えます。 なお、株式の取得割合により株主としての権利が異なることから、どれくらいの割合の株式を取得するかは、買い手側にとってはきわめて重要な問題です。詳細は省きますが、一般的には50%超の株式を取得すれば「買収した」「子会社にした」ということになり、3分の2以上の株式を取得すれば、株主総会での特別決議を単独で行えることから、全株取得に近い効果が期待できます。ただ、実際には、中小企業のM&Aでは100%譲渡(取得)がほとんどです。
営業譲渡
 「営業譲渡」は、企業が行っている事業(営業資産) そのものを、買い手に譲渡する方法です。一部門だけの譲渡(一部譲渡)も、すべての事業を譲渡する (全部譲渡)ことも、どちらも可能です。また、土地・建物などの有形資産や、売掛金・在庫等の流動資産だけでなく、無形資産である営業権や人材、ノウハウ等も譲渡対象とすることができます。 営業譲渡は、法人を引き継ぐ形ではありませんので、譲り渡す企業の債務などは自動的には継承されません。その意味では、簿外債務のリスクを避けたい買い手にとっては安心な方法です。また、株式譲渡に比べて手続きがやや煩雑になるものの、買い手にとっては欲しい事業、欲しい部分だけを手に入れることができるという大きなメリットがあります。 一方で、売り手にしても、不採算部門の売却により、事業の再構築や経営のスリム化を行うことができるとともに、売却して得たお金(会社に入ります)を別事業に投資することができます。
新株引受(第三者割当増資)
 「新株引受」によるM&Aとは、その名の通り、売り手企業が新株を発行(第三者割当増資)し、それを買い手企業が引き受け、大株主となることで経営権を取得するという方法です。前述した「株式譲渡」とは、既存株式か新株式かのちがいはありますが、株式取得によるM&Aという点では同じです。 新株引受は、株式譲渡と異なり、M&Aの対価は株式払込金として会社に入りますので、経営権の譲渡と同時に、売り手企業の資本力強化や財務内容の健全化を図るために、しばしば用いられます。また、既存株式の取得だけでは目標とする株式の保有割合の達成が難しい場合(売り手企業の規模が大きく、株主が分散しているような場合)などにも用いられます。
M&Aのメリット
 M&Aで得ることのできるメリットは、M&Aを行う目的や理由、M&Aの形態によって異なりますが、ここでは一般的なM&Aのメリットについてご説明します。
買い手のメリット
(1) 既存事業の拡大や事業の多角化ができる 当たり前のことですが、狙いをきちんと絞り込み、自社の経営戦略やニーズにマッチした企業をM&Aで買収することによって、事業の多角化や弱体部門の強化などを行うことができます。また、業界内での競争が激しい場合、同業種の企業との合併を行えば、規模の拡大が図れ、マーケットシェアを確保することができます。 (2) 時間を買うことができる M&Aを行えば、自社で一から「ヒト、モノ、カネ」を投入して、事業を立ち上げる時間と労力を省くことができ、機動的に新分野への進出などを行うことができます。「M&Aは時間を買う」とよく言われますが、これが買い手にとって最大のメリットの1つと言えます。 (3) 投資コストが安く、リスクが少ない M&Aで買収したのと同じ規模の企業や商圏をすべて自前で整えようとすれば、時間ばかりか、はるかに大きなコストがかかることも少なくないことから、M&Aは初期の投資コストが安いというメリットがあります。また、既存企業の買収ということで、売上・利益などの動向が読みやすいですから、新規立ち上げに比べてリスクが少ないとも言えます。
売り手のメリット
(1) 後継者難対策となり、会社が存続する 後継者難で悩んでいる中堅・中小企業は約6割にものぼると言われています。後継者が見つからず、廃業・清算ともなれば、せっかくこれまで心血を注いで築いてきた商圏・技術・ノウハウが無に帰すばかりか、従業員の雇用や取引先への影響も深刻です。M&Aで譲渡先が見つかれば会社は存続し、新たな発展のための再スタートを切ることができます。 (2) 企業体質の強化につながる M&Aで買い手となる企業は、上場企業や大手企業など、売り手に比べて経営・財務基盤がしっかりとした企業が多いことから、M&Aで大手企業の傘下に入ることにより、販路の拡大や円滑な資金調達、社内体制の整備など、自社の弱い点を補うことができ、企業体質の強化につながります。 (3) 株主の手取額が多くなる 税制のちがいにより、通常、会社を譲渡(株式譲渡)する方が、廃業・清算する場合と比べて株主の手取額が多くなります。企業規模や資産内容によって異なりますが、株式譲渡の方が約2倍手取額が大きくなります。会社が債務超過でないことがもちろん前提ですが、M&Aはハッピーリタイアメントを実現する有力な手段の1つなのです。