SEM 2.0を実現するために
前回のコラム「ビッドマネジメントできていますか?」において、自動入札では大量のキーワードを効率的に管理できるという利点と、機械が自動的に運用することによるチェック体制の強化をするべきという注意点を述べた。
今回は、それを更にブレイクダウンして、次世代の SEM 運用体制を実現するためのポイントを整理しよう。従来は、媒体毎にキーワードを出稿し、実績値から次の施策を練るといったサイクルが行われているが、次世代の SEM ではより深く・より効率的なサイクルがスピード感を持って実施されることになる。実現するための要件は、下記の通りになる。
・媒体の一元管理リスティング広告は、当然ではあるが媒体毎に管理画面が異なる。このことによって、媒体を横断的に把握することが難しくなっている。例えば、同一のキーワードの各媒体での実績値を把握することは、作業の手間を惜しまなければ可能ではあるが、大量のキーワードを把握しようとすると工数が非常にかかり現実的ではない。
また、キーワードの実績だけではなく、広告文毎の実績やランディングページ毎の実績を把握することも重要だ。媒体間の現状把握や相関関係の把握だけでなく、管理の効率化という点でも一つの画面で管理することが望ましい。
・Web 解析データとの統合リスティング広告の管理画面から取得できるデータに、インプレッション(表示回数)、クリック数、出稿費用、コンバージョン数がある。これらのデータからは、コンバージョンが取れているキーワードや CPA、広告文・キーワード毎のクリック率の傾向を読み取ることができるが、それだけでは不十分だ。
結局、「クリックされたか」「最終的にコンバージョンしたか」「費用はいくらかかっているか」しか読み取ることが出来ず、サイト依存の問題点やユーザプロファイルに依存した問題点は見つけることが出来ない。サイト誘導後に何ページ見たか、どのコンテンツを良く見ているか、何分滞在したか、そのユーザは新規顧客かリピーターかなどの Web 解析で得られるデータと統合して考える必要がある。
・実績データレポートの迅速化と次の施策の迅速化最も重要なことが、上記に挙げたポイントのレポーティングを迅速に行うことと、そのレポーティングを受けての施策の実行を迅速に行うことである。より良い成果を上げるためには、取得したデータが新鮮なうちに、傾向が変わらないうちに対応する必要がある。また、仮説・検証・施策実施のプロセスを早めることによって改善施策をより多く実行することができる。(施策が失敗してしまった場合にも迅速にリカバーできるだろう)更に、競合の広告主が手を打つ前に施策を実施することによって、先行者利益を享受することが可能となる。
以上に挙げたことを実現すると、SEM を運用していく上で効果を向上させていくサイクルが完成する。これにはシステム化かツールを使用することが不可欠だが、先端を行く広告主では導入が始まっている。(先日も、オムニチュア社よりビッドマネジメントツール「SearchCenter(サーチセンター)」がリリースされている)
SEM のデータ管理の強化と自動化の徹底に伴い、従来行われていた管理・運用体制を重視するフェーズから、より企画力が問われるフェーズへと移っていくだろう。これからはキーワードの CPC 調整や LPO という施策だけではなく、本質的なクリエイティブ力が問われていくことになる。