年越番組にもネットの波、巨大市場にビジネスチャンス
中国版「紅白歌合戦」とも呼ばれる中央電視台(CCTV)恒例の年越しバラエティー番組「春節聯歓晩会」はまだまだ根強い人気を誇る。それに加えて近年は、インターネットメディアが Blog や動画などを駆使した独自の「晩会」を制作し、若者を中心に人気を集めている。
今年は、合計で10以上ものサイトが「オンライン晩会」を開催した。中でも新浪網(SINA)が主催する「第1回中国オンライン動画春晩」に人気が集まっている。この「オンライン晩会」は、エンターテインメントの要素を大胆に取り入れ、時勢であるユーザー参加型志向を追求しているのが特徴だ。「相声」と呼ばれる中国の漫才や歌、踊り、お笑い、トーク、物まね、映画などがオンライン上で楽しめる。
CCTV の番組と比べると、オンライン版ではオーディション番組「スーパー歌姫(超級女声)」で優勝した李宇春や第2位の周筆暢、人体アートで有名な湯加麗などが登場するほか、Chinese BSB(口パクパフォーマンスで人気の男性2人組)といった、オフラインよりもネット上で人気を誇るアイドルらのプログラムが中心だ。このほか、ユーザー自らが製作に携われる「パロディー版晩会」などがアップロードされている。
「クリックひとつで晩会にアクセス:Blog 晩会、あなたが主役」では、中国現地のブロガーたちが晩会について討論する。新浪網以外でも、各サイトはそれぞれユニークな「オンライン晩会」をリリースしており、現地のインターネットメディアを中心に、「『春節(旧正月)』にあらたな楽しみを添えた」と評価も高い。
インターネット上の「春節晩会」がこうした人気を博すのは、日本と同じような背景がある。中国新聞社では、「CCTV の番組は20年以上もほとんど変化がみられない。いわば『視覚的疲労感』を視聴者に与える。ユーザーも参加できるインターネット晩会は、『自分が主役』感覚の強い若者を中心とした中国ネット利用者の志向に合致する」と分析する。
また、専門家は、「『春節』に新たな文化的内包を与えることは、『春節』の伝統を守るよい方法だ」と指摘。「単純に復古を追求していては、『春節』は行き詰まってしまう。『春節』文化に『花を添える』ことは、すべての中国人が担うべき文化的な義務である」とコメントする大学教授もおり、インターネット上で展開される「春節晩会」など新たな趨勢には肯定的な見解も多い。
このように、「春節」は大型連休としての経済効果を生み出し、インターネット企業に続々とビジネスチャンスをもたらしている。バーゲン情報や SNS、グルメ・レジャー情報など中国都市部の連休の過ごし方に関するテーマは、最も人気がある検索キーワードだ。
地域型生活コミュニティーサイト「口碑網」の李欧氏によると、同サイトでは「春節」の1週間ほど前から1日平均4,000人前後のペースで新規ユーザーが増えている(登録ベース)。グルメ情報の検索には100万件のアクセスが集まり、「年夜飯(旧正月大晦日に食べるご馳走。一般に午後8時までに食べる)」「年貨(餅・爆竹などの旧正月用品)」といった人気キーワードには、それぞれ1万件を超えるアクセスがあるという。
中国人にとって最も重要な祝日である「春節」。中国人の「春節」に対する思いの深さというのは、どの国のそれとも比較のしようがない。ある海外アナリストは、「『春節』とは、神様が中国のインターネット企業に授けたドル箱であり、『春節』を利用してあれこれ工夫を凝らして人びとを引きつけ、アクセス数を増やすだけでなく、『春節』に関連するビジネスチャンスを見つけ出し、オフラインのお宝をネット上に誘導して稼ぐことが重要だ」と指摘する。
しかしながら、「春節」期間におけるインターネットの利益モデルは、モバイルサービスとホテルのオンライン予約を除けば、その他ほとんどは無料サービスであり、しっかりとした利益モデルが存在しないのが現状だ。中国におけるインターネットの普及は、中国の伝統的風習を変える一方、新たなビジネスチャンスを創出した。中国のインターネット利用者数は約1.4億人。巨大市場を狙うビジネスが今もどこかで生まれている。