2007年6月13日水曜日

銀座ハチミツ飛ぶ人気 ビル屋上に10万匹

銀座ハチミツ飛ぶ人気 ビル屋上に10万匹

 東京・銀座の11階建てビルの屋上でミツバチ10万匹が飼育され、それからとれた蜜を地上のお店が次々に採り入れている。カステラ、ようかん、カクテル……。ミツバチが舞い飛べる背景には、超高層ビル禁止の地元申し合わせがある。「邪魔モノ」のない空が、ハチミツの自給自足を支えている。
 洋菓子店アンリ・シャルパンティエ銀座本店。5月16日から「銀座産ハチミツ・マドレーヌ」の看板を掲げる。この日用意した150個あまりは売り切れた。友人と訪れた神奈川県鎌倉市の主婦本江美穂さんは「銀座のハチミツが、銀座の洋菓子になるなんて」と、数個買った。
 地元産を使うのは現在12店。「はちみつカステラ」(銀座文明堂)、「はちみつケーク」(ミクニギンザ)、「はちみつ羊羹(ようかん)」(銀座清月堂本店)、カクテル「はちみつ・カイピリーニャ」(BAR5517)と並ぶ。
 銀座文明堂で「はちみつカステラ」を作る森幸四郎さん(72)はカステラ作り55年。駆け出しのころは店と同じ建物に住み込んだ。「思い出深い銀座で採れたハチミツをカステラに使える」と心弾ませる。
 蜜の採取シーズンは3月末から6月いっぱいで、商品も期間限定だ。
 ミツバチを飼っているのはNPO法人「銀座ミツバチプロジェクト」。紙パルプ会館(銀座3丁目)屋上で飼育し始めたのは昨年3月。沖縄の業者から購入するなどした。昨年に続いて今年も10万匹が活動する。
 世話をするのはNPOのメンバーで、地元で開業する弁護士、証券アナリストやアートセラピストら。飼育は素人だが、岩手県の養蜂業者を指南役に腕を磨いた。
 ミツバチは半径約4キロの範囲で花を求める。近場では銀座の街路樹や花壇、南は浜離宮庭園、北西では日比谷公園や皇居に向かう。ソメイヨシノ、マロニエ、ユリなどから蜜が採れる。
 採取された蜜は昨シーズンが約150キロ。今年は天候にも恵まれ、300キロを見込む。
 都心では六本木、丸の内などで相次いで超高層ビルが誕生し、買い物客の関心を集めている。一方、銀座では1998年にできた「銀座ルール」をもとに「ビルの高さは56メートルまで」と制限されている。
 メンバーには「銀座の特徴を生かしたい」という思いがある。世話役の田中淳夫さん(49)は「超高層ビルがあるとミツバチが飛ぶのに邪魔になると聞いた。養蜂は超高層のない銀座ならでは。ミツバチと共生可能な街という魅力を強調したい」という。

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