残業代、長年不払い 大和ハウス系列ホテル
偽造社員利用券による利益の水増しが発覚した大和ハウス工業の系列ホテル会社「大和リゾート」(大阪市北区)が、長期にわたり従業員の残業代を勤務実態よりも少なく支払っていたことが10日、分かった。昨年秋に監査役の指摘で改善したが、過去の不払いは調査していなかった。同社は「不払いがあった可能性がある」と認め、30ホテルの従業員約2000人を対象に調査を行い、確認分を払う方針を決めた。
大和リゾートは、従業員の残業目標時間を1カ月当たり30時間に設定していた。昨年10月、同社監査役が従業員と面談したところ、30時間を超えて残業している例が複数あり、その分の残業代が支払われていないことがわかったという。監査役は社長に報告、不払いを解消するよう求めた。
昨年11月中旬に社長名で「きちんと残業代を払う」という通達文をホテル支配人らに出した。だが「従業員から残業分の支払いを求める声がなかった」(浜博文・総務人事部長)との理由で「通達文が出た昨年11月以降に残業代を適正に支払えばいいと判断」(同)したという。
リゾートは勤務実態を確認しておらず「いつから不払いだったか分からない」(同)としている。労働基準法では、社員が雇用主に不払いの残業代を請求できるのは最長2年間となっている。
リゾートでは、タイムカードによる出退社の管理をしておらず、フロントや料飲などの部署ごとに従業員別の勤務表で把握していた。ホテル支配人に月間の勤務時間を報告する際、「管理職が30時間以上の時間数を打ち切っていた可能性がある」(同)という。
大和ハウスは「リゾートから監査内容として報告を受けたのは、社員利用券の不正使用による利益の水増しだけだ」(広報企画室)としている。