生産量、開戦前に迫る イラクの石油、治安改善で
イラクの石油生産量が、二○○三年のイラク戦争開戦直前レベルに迫る日量約二百五十万バレルまで回復している。治安改善に伴い、武装勢力によるパイプライン攻撃が減少したことなどが理由。石油収入の分配を定める石油法案の成立のめどは立たないが、国家財政の大半を石油収入に依存する中、石油省は価格高騰を追い風に輸出の拡大を急いでいる。
石油省によると、現在、日量約二百万バレルを輸出。多くが有数の油田を抱える南部バスラ州から積み出されている。輸出拡大に向け先月十七日には、国営の石油タンカー企業がバスラ港で二十七年ぶりに新型タンカーの進水式を行った。
また先月、武装勢力の攻撃をたびたび受けていた北部キルクークからトルコのジェイハンを結ぶパイプラインが再開、米軍に破壊されたキルクークとシリアのバニヤスを結ぶパイプラインの再開も決まった。具体的な日程は明らかでないが、ロシア企業が再開に向けた調査を進めている。
「日量三百万バレルまでの生産拡大を計画している」。石油省報道官は外資の石油会社などと開発契約交渉がいくつも進んでいると胸を張る。ロイター通信によると、国際通貨基金(IMF)当局者は○七年に1・3%だったとされる国内総生産(GDP)成長率は、石油生産の好調を維持できれば○八年と○九年には7%を超えるとしている。
一方で、イラク北部のクルド自治政府が海外の石油会社などと独自に締結している油田の開発契約について、中央政府は石油法案の審議が継続中であることを理由に「契約は違法」との立場を崩していない。
今月十七日には、石油省が自治政府側と契約を結んだ海外の石油会社との協力関係の停止を決めたことが明らかになるなど、好調な石油生産は中央政府と自治政府の対立を深める要因にもなっている。